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ヒドゥン2

  • ShinobuBigOcean
  • 2021年11月15日
  • 読了時間: 10分

せっかくのブログだし、長く書けるわけだから、

ちゃんと批評をやってみようと思う。(批評ってなんだ)


む、無理の無い範囲で……w


そんなわけで前回のヒドゥンの次回作「ヒドゥン2」


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■映画の題名や制作年

ヒドゥン2(1993年)


■監督名

セス・ピンカー

■主演俳優の名前

ケイト・ホッジ

ラファエル・スバージ


■ジャンル

SFホラーアクション


■あらすじ

人間の肉体を乗っ取る邪悪なエイリアンを抹殺したロイド・ギャラガー(演:カイル・マクラクラン)は、ベック刑事(演:マイケル・ヌーリー)の身体に乗り移り、地球に定住することを決意する。 ところが死んだはずのエイリアンが一部が蘇生。その魔の手にかかり、ベック(演:マイケル・ウェルドン)は命を落としてしまう。残された一人娘ジュリエット(演:ケイト・ホッジ)のもとに現れた謎の男は、 ベックにはエイリアンが乗り移っていたこと、そして、自分も同じ使命を帯びて地球にやってきた仲間であると告げる。。。 エイリアンの残党を倒し父の仇を討つため、ジュリエットの闘いが始まる!!


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多くの人が「つまらない」、「作らなくてよかった」という本作。

つならない点として前作の映像が長いという事を挙げている人も多い印象だが、

この映画をつまらなくしている要因はもっと他にある。


というような大義名分を掲げるつもりははなから無く、

単純にちゃんとした批評めいた事の実験台になってもらおうというわけである。(映画に謝れ)


というわけでいってみよう!


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■ストーリーや演出、設定面について


テレビ映画の制約を多分に受けているようで、

前作での多発していた性描写、暴力描写は鳴りを潜めてしまい、

前作にあるような異星人の非人道的さ=人間に対する脅威がなかなか伝わりづらい展開となっている。

その流れでメタル好きやフェラーリ好きな面も予算の都合かカットされ、

宇宙人たちは車にほとんど乗らないし、申し訳程度にしかメタルが流れない。

銃撃戦もほとんどない。登場人物がみんな一般市民なのだ。

出てきても拳銃が関の山。

何をするにしても行動に制限がかけられてしまい、物語の進行がとにかく焦ったい。

その割に、一般人であるヒロインがとある場所に不法侵入するのに葛藤がまるで無いという不思議。


そもそもヒロインは何の仕事に就いているのか、相方の宇宙人は何の人間に擬態しているのかさえわからない。キャラクターの過去やこれまでがあまり深掘りされないために、

感情移入や共感が得られない。

それは主人公達の行動の理由付けとして交わされる会話からも伺え、

ちょっと無理矢理な納め方してる感じが否めない。

その結果、ヒロインの名前が最後の最後で判明するほど、名前を呼ぶ事が無さすぎて、キャラの名前が誰一人として視聴者にはわからないという悲劇を生み出している。

そんなわからない事だらけの世界にやってきた味方の宇宙人は、

歯磨きも睡眠も食事もわからないのにSEXはわかるっていうね。


その他、ヒロインの父親(前作の主役)は殺人の嫌疑をかけられ、しかも確固たる証拠を示す場面も無く、視聴者としては疑惑の範疇を出ない上に、そのフラグを回収する事なく終わってしまう。


本編スタートの段階で捜査現場に野良犬が入って誰も気付かないというのもお話の展開としては辛いものがある。

せめて警察犬にしてくれ……。


ただ、この野良犬、バックトゥザフューチャーのアインシュタインかコペルニクスに似てる。

この当時の流行りか人気俳優犬だったのだろうか?


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ラストバトルに向けて、寄生体が変異していくのをトータルで4回見せられるのだが、

その内の2回はほぼ同じ内容なのはなぜ??(4回目は変異完了としての目覚めなのでまだ良いが。)

というか前作や劇中今まで変異してなかったのに何突然?どっから出てきたその設定。

進化なのか?


なお、その後の食事のシーンで世界観設定を語らせるのはとても自然で素晴らしい。

食事に語らいはつきものだ。


そんなこんなで全てに終止符をうち、ヒロインが一言。

「長い一日だった」。

いや、一晩明かしたし、起きてから夜までお前達何してたんだ。


そしてラストに挟まる唐突な異星人の詩。


「丘に咲く花は見知らぬ旅人

風のように去る。」


一見良さげな終わりっぽく見えるものの、

何の脈略もなく、ヒロインに響く理由も無い。

この詩を主題に、話を広げても良かったのでは?

自分ならこうする。

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「丘に咲く花は見知らぬ旅人

風のように去る。」

そう書き残して父が姿を消したのは2年前、OSUを出て、臨床心理士に就いた時の事だった。

刑事であった父の事だから何か理由があるのだろうと、ようやく納得しだした私の元に、警察から父の訃報が届いた。身元確認の為に検死室に呼び出された私を待っていたのは、60~70代近くに老け込んだ父の遺体だった。

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■編集・撮影技術・衣装やセットについて


まずは多くの人が語る前作終盤の映像を使った冒頭10分。

確かに新作に過去作を10分も使うのはよろしくないと思うが、

問題はここではなく、ここにつなげるためのテキストの出し方にその一端があると考える。

これまでのあらすじと後付け設定がテキストで語られるのだが、

無駄な言葉が多くテンポが悪い。

電子画面のノイズからテキスト表示かと思いきや、ぶつ切りでゴシックフォントで「15年前」と出て、再度電子画面のノイズからテキストであらすじの説明が始まる。

ゴシックフォントを挟むことで見た目の連続性が失われ、

体感として違和感を見てる側に与えてしまっている。

やるなら、先に15年前と表示してからノイズ画面でしょ!



全体的な印象として、

続編ではあるものの、テレビ映画という事で作られたので、映像の解像度の問題なのか、

シーンによっては70年代?80年代くらいの映像っぽく見える。

だからと言ってライティングが悪いとか、映像がチープだということはない。


主な舞台である廃工場を少ない照明と音楽機材だけでクラブにしてしまうのはテレビならではの低予算案で素晴らしい。


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バブル期だからか、クラブを建てようとするチンピラ?のリーダーが一番悪そうに見える。(セミロングオールバックにTシャツ+スーツ)

なんか無駄に偉そうで悪そうだったからてっきりこの人に寄生して……なんて思ったけど、この人の出番は序盤だけで被害者にもならない。

寄生された人はもっと背も低くて、アクの強い顔した成り上がり夢見る小悪党みたいな人。

絶対お前被害者だろって思ってましたごめんなさい。

オールバックの人のバストショットが執拗なんだよ、きっと。


そんなこんなで前作からの生き残りであるベック刑事(前作の主役・ヒロインの父親)が復活した異星人を倒すため孤軍奮闘するのだが、生命力の減衰で誰お前?ってビジュアルになってて、前作との映像的な繋がりをまるで感じられない。(俳優さんも違うので当然なのだが)

衰退していく過程のバストショットでも取ればまだ良かったのに、

シルエットを挟んで、ザ・フライの主人公のようなルックスの奴が出てきて、

突然そいつが敵を倒す為に地下倉庫で戦うので、

ライティングも相まって、「元善人今狂人の悪者VS生粋の健全?な悪党」みたいな対決になってしまった。

しかも次のシーンでアッサリ亡くなってるし。

絵的な説明は確かに次の検死室でも成り立つがそれにしてもアッサリ過ぎやしないかい?

一作目での感動やBLっぽいドキドキ?、そして未知との遭遇的なラストの不穏さは何処へやら……

受肉した事の弊害を説明するのは良いが前作の主人公を殺人容疑者にするこたぁ無いだろうよ。死にゆく相棒の家族を想って、身代わりをするくらい高潔な宇宙人だったのに……。


そんな調子で、最初の10分も相まって、開始から45分でまだ捜査は始まったばかり。

本当にあと半分で終わるのか別の意味で不安になる。


前述の脚本の部分でも記したように、

テレビ映画という事で、セックス、ドラッグ、ヴァイオレンスに関する規制をもろに受けたのか、

映像的な刺激が少なく、サービスシーンも無い為、

見た目に弱くならざるを得ない。(でもクリチャー表現は規制が緩いのかしっかりやるっていう。)

その代わり、女優は羊たちの沈黙の頃のジョディフォスターを使いたかったのかな?って感じの女優さんで、綺麗で可愛い。キャミィのコスプレをしたら絶対に似合う。



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(歯磨きのシーンはなんかエッチだ……w というか偽物語の歯磨きプレイはこれが元ネタなんじゃないのか!?)


その他、銃の扱いが前作がしっかりやっていたので、素人っぽさが目に付く。

主人公よ、お前は絶対にFBIじゃないだろう。


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そして前作を踏襲してか、やっぱり最後は不穏な空気を漂わせて終わりっていう……

ただ、今回のはギャグに見えるし、そのショット挟んで何を伝えたかったの?という感じ。

むしろそのラストショットはファックして夢現【ゆめうつつ】の時に挟んでラストバトルに向けて不吉さを漂わせるのに使った方が良かったでしょうに。


■音(音楽や音に関する事)


音楽も盛り上がりに欠ける。

掴みとなる音楽がまるで無く、1番良かったのはヒロインを信じさせる為に精神体を見せた時に流れたBGMくらい。

クラブのシーンの音楽も90年代の音楽シーンとは思えないヌルさ。

アップテンポではなくミドルテンポのループのみで全くノれない。

なのに100人くらいモブがwowとか言ってるのが非常にシラける。絶対その声サウンドライブラリだろ。

ミュージックシーンの撮り方でその時代の先端が垣間見える、またはその時代を切り取る事ができるように思えるのだが、

映像の一部は、今後のサイバートランスへと繋がるような色彩や洗練されたものを感じた。

が、それは何か別作品のフッテージだったのだろうか??そこだけ少し映像の解像度が高いようにも感じられた。

細かい話をすると、91年にNirvanaのSmells Like Teen Spirit が出ているので、

クラブシーンが過渡期や過疎化を迎えた時期だったのかもしれない。

そのためにステレオタイプなダンスシーンの音楽の起用をきらったのかもしれない。


その他、小気味よかった80年代の銃声が、90年代になった事で刷新されたのか、

リアル調な音になった事で面白みが無い。


一応、キャラの行動に合わせて音楽の切り替わりはあるものの、

前作のようなセンスの良さは無く、音色も場面にあまり沿ったものになっておらず、

むしろクラブ(廃工場)のシーンを基点にしている事から、金属音と電子音の楽曲をテーマに楽曲が制作されている。だからなのかメタルが全然流れない。

宇宙人の奇抜さ特異さ、わからないことが多くて戸惑うという滑稽さが、あの大量消費されるようになってしまったメタルとマッチしていて良かったのに。



■総括

いやー、これはひでぇ。

前作の良かった所をことごとく潰してる。

テンポが悪いし、BGMも盛り上がらない。

目立って良かったのは女優さんが可愛いって事くらいだ。

「評論の為にもう一回見るの?辛すぎでしょー。」と素直に思った。


頑張って見たけど。


その結果、作品の粗が見え、

隠れていたこの映画本来の骨子が見えてきた。

実はこの映画、随所に精神(臨床心理)に関する要素が出てきており、

冒頭の精神科医が必要というセリフや、OSUで臨床心理学を専攻していた事、宇宙人が精神体であったり、精神世界に関する説明があったりする。

更に、ヒロインの自室に日本庭園を模したインテリア?や、箸を使って食事をしているシーン(ただしこの時は中華だと言っている)から、おそらく精神的な事に関与するファクターとして、禅や仏教に精通する要素取り入れている事からも、その可能性が伺える。

(ベスト・キッドなどからも当時のアメリカ人における日本と中国の違いというのは大差無く、混同して認識していると見て問題無いだろう)


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このような要素から、

おそらくは人間の在り方や定義を問答するようなストーリーラインが展開された事が予想できるが、

何処かしらの段階で脚本を大幅にリライトされたか、スポンサーなどの外的要因か編集権を持つ人が、意図的に映像をカットしたり、撮り直しをしために、

お話やセリフのつながりがおかしなことになり、凄惨な続編となってしまっているのではないかと思う。



そもそも、1作目で綺麗に完結していただけに、2作目を作る事のハードルが初めから高かったわけだから、あの手この手とやろうとしたのだろうが、テレビ映画という制約の多い土俵が、監督の目指す表現をを許さなかった為に駄作に落ちたといったところだろうか。


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そんなわけで今回はこの辺で。


映画をレビューするために、二回見るという事をしたことがなかったので、

文面がまとまらないのは悪しからず。

自分としては初見で一気に書き上げてしまった方が、まとめやすいのだが、

二回見たことで、本来意図していたであろう映画の骨子が見つけられたのは新たな発見だった。


今回はこの映画をチョイスしたわけだけど、

名作になるといろいろと大変そうだと思ってやったのに、

人からつまらないといわれる映画ですらこれだけの発見があったわけだから、

面白い映画を見てしまったらどうなってしまうのやら。自分が。


ではまた次回。


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お仕事の話

撮影さんの雰囲気が怖いだとか、 胃がキリキリする系の圧があるとか言われるけど、 撮影には守らなきゃいけない締切やクオリティラインがある。それは撮影に限らずどのお仕事でも同じ事だと自分では思ってる。 難しい事や大変な事をやってるから真剣にもなるし、怖い雰囲気になる事はあるかもしれない。 だけども、もしそれが誰にでもできる簡単な事で、全員がふんにゃりほんわりした雰囲気でできるのなら、 それが良いと思う

 
 
 

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